220825

白山をいただく。 | Day 2

 

夜中3時半、目が覚めた。というよりリュートが起こしてくれた。「タカイの歯ぎしりヤバかったな」と事実確認をして身体を起こす。山の上は8月といえど寒い。外の気温は8℃、おまけに霧でホワイトアウトしていた。周りの玄人たちも起きはじめたので、ぼくたちは様子を伺う。通常、「この時間から登り始めるといいですよ」という太鼓の音が奥宮から鳴るはずなのだが、聞こえない。そういう日はそもそもご来光は見れないらしい。しかし周りの玄人たちは支度をして出かけ始めている。まだ寝ているタカイを起こし、ぼくたちものっそりと準備をする。4時半、暗闇の中、霧の中、わずかな希望を抱いて山小屋から踏み出した。山頂までの道のりは先客が列をなし、ヘッドライトの灯りでで一本の線になっていた。わずか30分で着くと甘く見ていたが、前日の疲労もありやっぱりキツい。小休止を挟みながら進んでいく。次第に夜が明けてきて、灯りがいらないほどになってきた。5時前、山頂に到着。多くの人が今か今かと、太陽が出てくるであろう方角を見つめていた。ぼくたちも、その出てくるであろう方向を向いた。結果はわかると思うが、ご来光は見れなかった。ほんの3秒ほど、霧が晴れて線香花火の終わりかけほどの朱色が見えたが、それ以降は出てこなかった。出発前に、アウトドアショップのオジさんからもらった「見れないこともよくあるって覚えておけ」という教訓があったので、そこまで落ち込むことはなかった。一瞬だけ見えた、ほんのりオレンジがかった空が、近くて、そして透きとおっていて、印象的だった。とりあえず山頂の印の石碑?で記念写真をとり、山荘へ下る。普通に「頂」に行けたことは嬉しかった。

 

 

山荘にもどり、朝ごはんを食堂で食べる。梅干しと白ごはんが身に染みた。あったかいお茶は2杯飲んだ。それから賞味期限が1年前で気づかず持ってきたドリップコーヒーを淹れて2人にも分けたが、後にタカイが売店でコーヒーを新たに買っていた。次は豆を持ってきてしっかりと淹れたいと思った。支度をして8時半チェックアウト。下界を目指す。昨晩からずっと霧で、昨日とは景色が全然ちがう。登りはキツかったけど、下りはあんまり負担にならないな、と序盤は言っていた。同じ道は使いたくない性分なので、名前的にも優しそうで、知り合いからオススメされた「観光新道」というルートを選んだ。が、昨日のルートと比べて険しさが別次元。平たい道など存在せず、ただ植物が生えていないだけ。ゴツゴツした大岩がゴロゴロしていて、岩から岩へ飛びうつるのが大半。「観光」という名前は絶対変えた方がいい。晴れた日は、景色は素晴らしそうだった。

 

 

昨日とは違った天候で、山を見るとそれはそれで神聖な雰囲気でよかった。水が滴るさまざまな植物を見ながら楽しめた。「チングルマ」という植物の名前で5分くらいトークをした。それから1時間ほど進むと雨が降りはじめた。最初は小雨程度だったが次第に強まり、最終的には「土砂降り」になった。おまけに観光新道。来た道を引き返すわけにはいかず、突き進む。「初挑戦の日に大雨やったら、2回目絶対楽やん」とまた軽い気持ちで高を括ってしまう。そういう人間なんです。ぼくたち。大雨で水溜りが増え、靴はあっという間にずぶ濡れ。身の危険を感じるほど降っていたので、最後らへんは景色を楽しむ余裕などなく、見たこともない巨大なヒキガエルがいても「あっ、デカイ蛙や」で素通り。終盤の観光新道は狂ったように急で、足は限界に達し、生まれたての小鹿の感覚を味わった。なんとか登山道入り口まで戻り、トラブルも怪我もなく無事に降りてこられたので安心した。アスファルトの上を歩くと妙な感覚になった。

 

 

シャトルバスに乗り、車を停めてある市ノ瀬へ。ビショビショになった服を脱ぎ着替える。昨晩お風呂に入れなかったので、まずは銭湯。風呂上がりは格別だった。そして石川県民の胃袋を支える「8番」で満たす。振り返ってみれば当初のゴール3つとも達成できなかったので、2回目は全部できるようにしたい。それに「すべてのグループが羨むような豪勢な食事をつくる」というゴールも追加されたので、次回が楽しみだ。初の登山だったが、思った以上にキツく、後2、3日は、歩くのがやっとの筋肉痛に見舞われた。でもそれ以上に、上からの景色は壮大で、空が広くて、自然がなにより美しかった。2人は幼馴染で、20年くらいの長い付き合いだが、普段と違う新鮮な時間を過ごせた。一緒に登れて良かったと思う。秋は空気が澄んで、星がものすごく綺麗だそうで、第二章の計画をぼちぼち立てていこうかな。

 

 

 

Related works