「なにもない」がある能登 vol.01
生まれて25年、人生のほとんどを石川県で過ごしている。離れたのは、22歳の時に渡豪した1年だけ。1年も日本をという故郷を離れると、海外の観光客が想像するような「JAPAN」というステレオタイプのイメージが出来上がってくる。案の定、帰国後の数日間は「日本すげー!」と連呼していた。
と、いった具合で、今まで過ごしてきた石川とは違った見方で、故郷を見つめなおすことが出来た。金沢はもちろん、文化的にも歴史的にも素敵な街だと思い、さらに好きになった。だが、それ以上に、能登の持つポテンシャルの高さに気づいてしまった。というより今まで盲目すぎたのかもしれない。
タイトルは『「なにもない」がある』と書いているが、実際は数えきれないほどに魅力がある。今まで能登には「なにもない」と思っていたからこそ、このタイトルにした。そんなやっと発見した能登を、能登の魅力を、少しづつ記録していこうと思う。
2021年8月、天気は晴れ。奥能登にある輪島市へ向かった。のと里山海道を降りると、そこは別世界のよう。能登のある先輩が言った「能登は外国」はあながち間違っていない。ミンミンゼミの大合唱、小鳥のさえずり、ただの風でさえ気持ちよく感じる。日本の夏を感じたいときは、能登が一番だと思っている。
輪島市は日本海に面した「外浦」と呼ばれる海岸側に位置している。冬場は強風、荒波が押し寄せるが、夏場は比較的おだやかだ。この日は港は釣り人で賑わっていた。海の透明度が、金沢と比べて格段に違う。これもまた魅力だ。釣りもがっつりハマる時が来るだろう。
市内中心部から少し離れた場所に鴨ヶ浦(かもがうら)と呼ばれる人工のプールがある。プール付きの小学校が当たり前ではなかった1935年に造られたらしい。今から90年も前だ。海水が入ってくるので、もちろん魚が泳いでいる。プールでは小学生が泳いでいた。シュノーケリングをしながら、モリ付きをするのが輪島キッズの夏の過ごし方だそうだ。「この街が好き。ずっとおりたい」と小学四年の彼は獲ったカワハギの皮を剥ぎながら言った。日差しで目を細ばせていたが、その目に迷いはなかった。大人になるにつれてその気持ちは変わるかもしれないが、大切な少年時代の思い出として色濃く残るだろう。それに彼は、オレの記憶にも強く残っている。
海岸沿いを走っていると家が数十軒の小さな港町を見つけた。通り過ぎただけだが、次来た時は小舟のある場所まで降りてみようと思う。必ず何か発見するはずだ。
こんな感じで、能登の魅力の3%くらいしか見つけていないが、徐々に気付いて、感じて、記録していこうと思う。